【書評】『戦後経済史』(野口悠紀雄著)
とある方に教えていただき、こちらの本を読んでみました。
『戦後経済史』 野口悠紀雄著
どうやら僕は「戦後」というものをかなり勘違いしていたようです。
一般の人の戦後のイメージってこんな感じだと思うんですよね。
・戦争によって、日本国中が焼け野原に。
・GHQによって戦前の体制が一層された。日本人はみな大変な思いをすることに。でもみんな頑張った。
・その後、朝鮮戦争が起き、好景気に沸いた。
・そして高度経済成長へ・・・
要は、軍事ではなく経済に集中してみんな頑張ったから高度経済成長ができた、って思ってたんですけど、この本によるとどうやらその考え方は正しいものではないらしいです。
その背後にはシステムがあり、それは戦時中から引き継がれたものだと。
この本におけるキーワードは『1940年体制』。
終戦が1945年なので、それ以前に作られた体制が戦後の経済復興・成長に役立ったと。
では、なぜそうなったのか?いくつかのヒントが書かれています。
・GHQは日本経済についてあまり知識を持っていなかった。さらに、通訳を付ける必要があったが、通訳は経済について詳しくない。そのため、官僚がある程度情報をコントロール出来た。
・日本は戦争で工場などの設備が破壊された。戦後1から作りなおしたので、戦争時代のインフラが温存された欧州よりも新しい時代にあった設備を作れた。
・「不労所得」を認めないとした戦時中の官僚と、戦後のインフレによって地主や富裕層が撲滅され、一億総中流とよばれる社会構造が産まれた。
・戦争中に確立された、戦争遂行のための「政府が資源を割り当てる」経済システムは戦後も温存され、戦後に重化学工業化していく外部環境に整合していた。
・日本よりさらに賃金の安い中国が「大躍進政策」で鎖国した結果、日本に有利に働いた。
つまり、戦争中の体制が温存された結果、戦後の経済成長の基礎ができたということでした。
まあ、戦争によってなにもかも破壊されてしまったら国は成り立たないので、さもありなんという感じでしょうか。
やはり外部環境と国の仕組みが合致することで成長するのだという点は企業も国も変わらないのだなと感じました。
今年は戦後70年ですが、戦後という時代への新しい見方ができた興味深い本でした。