【書評】『上達の法則』
『上達の法則』という本の紹介です。
英語学習でもスポーツでもなんでもいいのですが、せっかく取り組むなら上達したいものです。
この本はその「上達」ということを脳科学面から考えているという本。
「なにかが上達する」というのはその人の人生にとって非常に大きな意味を持つと思っています。
なぜなら、上達には一般的な法則があり、一つ何かができるとほかのことも上達する可能性が高い。
さらに、「何かがうまくいった」・「できるようになった」という経験は自己効力感に効く(と思う)のでその人の人生にとっても好影響だと思っています。
実際、こちらの本でも
--
自分の上達の能力に自信がないことが、生き方までも狭めてしまう可能性のあることがわかる。
--
といっていて、 なにかをやりきって上達した経験があるということは人生の充実度にも影響するらしい。
上達するとはどういう状態か
「アイコニックメモリ」「ワーキングメモリ」「長期記憶」「スキーマ」という4つのキーワードを抑える必要があります。
人間が何かを見たり聞いたりした時、情報はまず、「アイコニックメモリ」に入る。
ここは見たもの・聞いたものをほんの少しだけ(数百ミリ秒)記憶しておくメモリである。
すぐになくなってしまうため、記憶を「ワーキングメモリ」にいれる必要がある。ただし、ワーキングメモリは容量と時間に限界ががある。容量限界は7-9チャンクだそう。
チャンクとは意味のある一かたまりの事。
たとえば完全にランダムな数字を覚えるのは7桁が限界らしい。1桁で1つのチャンクを使ってしまうから。
これを長期記憶にするためには、何度も何度も頭の中で繰り返すことが必要で、これを「リハーサル」と呼び、「長期記憶」に入る。いわゆる「覚えた」状態だ。
ピンとくる人もいると思うが、これはDB=長期記憶、メモリ=ワーキングメモリの関係に近い。
ここで重要なのは、
・DBのテーブル構成(=スキーマ)がどうなっているか? = どう覚えているか
なるべくチャンク(かたまり)で覚えることで、ワーキングメモリを圧迫しないことが重要。
・どうインデックスを貼るか
という2点。実際に脳が作業するワーキングメモリの作業量を減らしてあげることで、多くの知識を同時に働かせることができる。この状態が「上達した状態」と定義できるのだ。
うん、この文字数だけでは説明しきれないので、詳細は本書を読んでください。
入門~初級者のあいだ
まず、始めることが大事。
その後、
・入門書を購入する
・慣れ親しみ、ワクワクする
・頻度を決める
・学習する場を見つける
・自分の得意を見つける
という5点をやるとよいと言っている。
なにかを始めたいと思ったとき、まずはとりかかってみることが大事。
まずやるべきことは2つ。
・入門書を買ってみよう
・慣れ親しんで、「楽しい」と思おう
「面白いな」と思えなければ続かない。そういった意味では取り組んでいる対象(この場合は英語)に対して「面白い」と思うことはとても大事です。
本当は、英語自体に興味を持てるとベストなのだが、いきなり英語学習自体を好きになるのは難しい。
実際は、2つのパターンに分かれると思っている。1つは「自分の好きなものと英語を絡める」パターン、もう一つは「英語を勉強している自分を好きになる」パターン。
前者であれば、ハリウッド映画で好きな映画(今ならスターウォーズとか)に絡めてみる、といったようなことが遠回りに見えても近道だと思う。
後者の特徴的なパターンは、他の人と競争すること自体がモチベーションになるというパターン。他にも勉強が終わった後に勉強した記録が残ってうれしいといったようなこともこのパターンに含まれる。
どこかの段階で対象物を好きになることが必要になると思うが、会社から言われて英語をやらなければいけないなどどうしてもやらざるを得ないというケースもありうる。
こういったケースでは、対象物そのものを好きになる前に頑張っている自分のことを好きになるという程度でもよいのではないかというのが自分の意見である。
それによって続けられるのであれば、上達に近づくし、少し時間をかけないと英語学習そのものが楽しいと思うのは難しいから。
まとめると、最初は自分からその対象(すなわち英語)を好きになること、そして好きになる過程で学習していくペースをつかむことが重要だと思っている。
年齢と上達について
最後に、年齢と上達に関して、本書では下記のように記している。
--
加齢と能力について厳密な検討をした最近の心理学研究の結果では、この年齢になって能力が落ちるということは基本的にないことがわかっている。
--
(※本書からの抜粋)
つまり、年齢によって落ちたりすることは基本的にないということである。
「もう歳だから新しいことを始めるのは無理」というのは思い込みにすぎないということらしい。
むしろ定年後の人生のことを考えると、「自分はそのあとこれをやる!」というものを作ったほうがよい。つまり、40代・50代は逆に何かを始めたほうがよいということすらいえるのだ。